「謎解き」の広げ方。−マーケティング施策を見てみよう!

謎解きって、売れてるの?

皆さんはどうやって謎解きを知り、購入しますか?

なんとなくTwitterで流れてきたとか、友人におすすめされたとかでしょうか。僕はそんな感じです。

でも、想像してみてください。Twitterをやっていない人なら。謎解きってちょっと聞いたことあるけど行ったことない人なら。どのようにしてコンテンツを知り、購入に至ると思いますか?

喜ばしいことに、今やそんな人たちが多くいます。というより、そんな人たちを巻き込んでいかないと成長しないくらいに界隈が大きくなっています。

この記事では、どうやって謎解きを知ってもらい、どうやって購入してもらうかについて紐解き、謎解きという文化がより広がっていく一助となればと思っています。

 

目次

 

自己紹介

yashです。

AnotherVisionでは『NEXT』やアナビレコードのフィナーレ企画『AnotherVision Encore』の司会にて、皆様にお会いしているかもしれません。

その他、色んな謎解き団体にスタッフとして顔を出させていただいています。

 

 

すでに大学を卒業しており、現在はWebマーケティング・広告・PRの会社にて、提案から運用、クリエイティブ、コンサルテーションまで一通り行なっています。

 

 

 

内容を始める前に

本記事は、AnotherVision Countdown Calendar 2024(#AVCC2024)の12/20(金)の記事です。

同日には、一緒にアナビアンコールの司会をさせてもらった沙穂の記事が上がる予定ですので、そちらも読んでみてください!

 

わかりやすいように、この記事では実際の団体名や施策を例に出しています。これらについて、当然ですが、「内部情報」は書いていません。全て、いちユーザーとして見られる範囲内で記載しているつもりです。

もし内部情報に該当するものがあったり、そうでなくても不快に思われる事業者さんがいらっしゃれば、お声がけください。誠実に対応します。

 

また、わかりやすくするため、多少古いモデルや考え方を記載している点も多いと思います。詳しくは各々でお調べください。

 

購入までの道筋は?−AISASモデル

人が商品を知ってからそれが売れるまでのプロセスは、色々な形でモデル化されています。謎解きコンテンツだとしても、そのプロセスを当てはめて考えてみることは有効でしょう。

 

ここでは、(少し古いですが)「AISASモデル」というモデルを使ってみましょう。

カタカナ語胡散臭いよね、わかる。なるべくカタカナ使わないようにします。これだけは使わせて。

 

「AISAS」は略語で、「Attention」「Interest」「Search」「Action」「Share」をまとめています。購入までのプロセスは、「注意」「関心」「検索」「行動」「共有」の5段階に分けられる、ということですね。

 

AISAS

AISAS|用語集|デジマール株式会社

 

前提の考え方として、ここではあまり「n=1」では考えません。多くの人に対して、何割が興味を持ち、何割が購入してくれた……というように、人を集団として、確率として考えます。

 

注意(Attention)

「サービスを見る/知る」段階です。

Twitter上の告知や公演後の告知が皆さんにとって思いつきやすいと思いますが、最近だと電車の広告もよく見かけますよね。

地下謎、メトロタイムゲート、謎解き地下遊戯場、山手線周遊などは記憶に残っています。井の頭線の黄色いポスターも印象的です。地域振興が多いので鉄道会社が関連することが多く、電車広告が増えるのかな〜と思っています。

東京メトロ車内で見かけた、QuizKnockのメトロ周遊の広告

この段階では、購入には辿り着かないどころか存在を覚えているか怪しいレベルです。「認知」が足りていない状態と言えますね。

(「謎解きと名の付くものは全て遊ぶ」ような層は全体に対して割合が小さいので無視します)

 

関心(Interest)

「サービスに興味を持つ」段階です。

認知があっても、何かしらの興味がないと主体行動には結びつきません。

興味を持つ要因は色々あると思いますが、例えば「彼氏と遊びに行きたい」とか「コラボ元が好き」、または例えば「ビジュアルが好き」とか「メタレーベルである」とかがあるでしょう。「面白そう・自分に便益がありそうに見える」ことが大切です。

 

検索(Search)

これは現代ならではですね。

謎クラであれば、Twitterハッシュタグ検索する人が多いと思います。僕もします。

他にも、Google/Yahoo等での検索や、各種ポータルサイトでの検索もこれに含まれます。

 

行動(Action)

実際に行動します。「チケットの購入」が成果地点ですね。

色々な情報を検討した上で、購入サイトを通して購入するのが一般的です。

この時購入サイトのUIや情報設計が悪いと離脱されてしまいますが、この離脱者は購入の確率が非常に高かった層のため大変もったいないです。購入導線は最重要です。

SCRAPはここもしっかりしていて、スクチケだけでなく、セブンチケット等のプレイガイドからも購入できますよね。手数料はかかると思いますが、購入層を広げる施策の1つです。

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共有(Share)

これも現代のマーケティングの特徴です。特に謎解き界隈において面白い点だと思っています。

皆さん行った謎解きの感想をTwitterへ投稿しますよね。その投稿が、他の人にとっての認知(Attention)・関心(Interest)・検索(Search)の受け皿になっているわけです。

特に影響力のあるアカウントからの感想は、多分謎クラからのチケットの売れ行きを左右しているんじゃないかと思っています。チケットの購入数を謎クラに頼っている団体ほど、この部分が大切だと思います。

 

さらにその先

いかに「リピートしてもらうか」も大切な観点です。

一般に、参加数0回から1回になるまでのハードルが最も高いので、そこに予算を掛けるのが当然です。その予算は、1回の謎解き参加で得られる利益よりも多い金額を使っていると思います。(これはマジで想像)

ですので、なるべく多くの人に2回、3回と参加してもらわないと、採算が取れないわけです。

 

 

具体施策

AISASの各段階に対して、色々な施策が考えられます。

我々に見える部分だけでも多数施策がありますので、実例を見ながら考えてみましょう。

 

認知されよう

これフワッとしてますね。注意(Attention)〜関心(Interest)あたりへの施策です。

例えば「謎解き」を「友達やパートナーと遊ぶ手段」と定義するならば、

「遊びを探している人に対して候補の1つとして頭に浮かんでもらうための施策」が、認知施策です。

先ほど言及した電車広告や、YouTubeの動画広告などが挙げられるでしょう。

ただ、率直に言えば「お金」には繋がりづらい施策のため、後回しにされがちです。

SCRAPのYouTube広告。QKの成田高校謎解き企画を見ていたら表示された



 

検索面を攻略しよう

認知してから購入を決めるまでの間には、検索(Search)行動があります。ここで購入へ誘導できるかどうかで集客数が大きく変化します。

検索時に出てくるページには、実はいくつかの種類があります。

・広告

・公式ページ

ポータルサイト

アフィリエイト(謎解きだとあまり見たことないですが・・)

・その他個人サイト

全てのwebサイトには「目的」があります。なぜなら、webサイトを作るにはお金や時間がかかるからです。その目的は、何かしらを購入させるか、PV由来の広告収入を得るか、がほとんどなのです。これを意識しながらwebを見てみると、また世界が面白くなると思いますよ。

 

web広告

皆さんweb広告というと負のイメージがあるかと思いますが、事業主側からすると必要なものです。テレビCMなどの(認知寄りの)広告に比べ、コストが抑えられるし費用対効果が測定しやすいのがメリットです。またターゲティングを細かく設定できるのも強いメリットですね。

僕の知る限り、SCRAPや街ハック!がお金をかけて周遊の広告出稿をしているイメージがあります。YouTubeとかInstagramとか見てると出てきません?他の団体も、昔はやっていたとかの噂を聞いたことがあります。

YouTubeアプリに出てきた東京駅周遊の広告。これ、「謎付き東京ばな奈付き周遊」なんだね、ウケる

 



Chromeアプリの下には「Discover」という広告面があります。ここにもSCRAPが。(一番上に出すために何度リロードしたことか・・・・)

 

面白いのは、「謎解き 制作」で検索すると、イベントを遊ぶのより多くの検索広告が出稿されている点です。そりゃ法人向けの制作案件の方が費用対効果合いそうだよね。

こんなこと調べてたら、Instagram広告も出てきました。





公式サイト

よく「LP」とも呼ばれますが、これは「Landing Page」の略です。検索後に初めて「着陸する(landing)」ページのことを指します。

当然ほとんどの事業者はこれを用意していますが、ここまで来てくれた人は「検索(Search)」の段階を超えているので、なるべく「行動(Action)」に繋げたいですね。「面白そうさ」というプラスの側面に加え、例えば「初めてでも大丈夫か」「パートナーと二人で遊べるか」などマイナスの可能性を払拭するコンテンツがあると良いでしょう。

この点では、Far&Nearの「ビギナーモード」施策とかは面白い試みですよね。制限時間を伸ばすなどして、同じコンテンツを多様なターゲットに広げる施策です。

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Far&Near 大魔王ゾーナの逆襲|Villan-Said

 

ポータルサイト

ホテルや美容院を探す時、皆さんポータルサイトを利用しますよね?じゃらん楽天・hotpaper beautyなどがそれです。

イベントも同様です。

「公式サイトへのダイレクト流入」をしてくれるのはコアユーザーだけで、ターゲットを広げるにはポータルサイト面も抑える必要があります。

例えばKADOKAWAのイベント情報メディア・Warkerplusで調べてみると、SCRAP、Tumbleweed、XEOXY、サニサニーピクニック、時解、、など多くの謎解きイベントが掲載されています。

東京都のリアル謎解きゲーム一覧(15件)|ウォーカープラス

 

ちょっとこれに関しては、掲載料を払っているのかどうかなど分からないのですが、こういった面に情報が出ていることは、特に新規顧客の流入に対して重要でしょう。

 

補足ですが、ESCAPE.IDがこの役目を担えるようになると界隈の発展に寄与しそうだな…と個人的に思っています。期待してます。(勝手に)

 

オウンドメディアの充実

自社サイト内のコンテンツのことを言います。もちろんイベントの公式サイトとかも含まれるのですが、ここでは「生活者に役立つ情報まとめ」の意義について説明します。

「これからミステリー」ってご存知ですか?ゴリっと資本を入れてマダミスの普及に努めている会社なのですが、このページ内にこんな記事がありました。

fno-mystery.co.jp

めちゃめちゃちゃんと謎解きの遊び方について説明してくれていて参考になりそうです。この記事に辿り着く人は、例えば「脱出ゲーム カップル」とかで検索した人でしょう。でも、どんな意図があって、マダミスの会社がこんな記事を書いているのでしょうか。

それは当然、マダミスを買ってもらうことです。

「脱出ゲーム カップル」で検索している人の中には、もちろん脱出ゲームがしたい人もいるでしょうが、パートナーと体験型のゲームを遊びたい、という人もいるでしょう。別に脱出ゲームじゃなくてもいいわけです。

そんな人にこのページを見てもらい、何%かをこれミスへ送客できたら嬉しいじゃないですか。それがオウンドメディアです。

実際、サイト上部と下部には、このようにこれミスへの送客リンクがありました。

このように、多少なりともサービスに関係している情報について、生活者に(本当に)役立つようなコンテンツ(≒オウンドメディア)を作成することも、マーケティング施策上は大切なものになっています。詳しく知りたい人は「PESO」で調べてみてください。

僕の印象ですが、これミス、すごくちゃんとしていると思いますよ。

 

買ってもらおう

ここまで布石を整えて、やっと購入です。行動(Action)のフェーズですね。

ここもいろんなテクニックがありますが、例えば「セール」とかは1つの手法でしょう。この辺についてあんまり書き過ぎちゃうのはアレなので、省略しますね。

 

共有してもらおう

謎解きはすごく特殊な文化だと思っていて、「感想ツイート」という文化がありますよね。これって要はSNS上での発話数を増やすことに繋がります。発話数が増えると売り上げが増える、と思います。多分。(データは持っていない(そりゃそう)んですけどね。)

感想ツイートを促進するための施策としては、持ち帰り謎等であれば、感想を投稿するためのリンクを設置しているのはよく見ると思います。また、直接的なやり方だと「投稿したらステッカー」の施策(SCRAPに多い印象)や、感想を投稿すると抽選でクーポンが当たる施策などもありますね。

また、フォトスポットの拡充なんかも有効なんじゃないでしょうか。最近だとTumbleweedの『loop』という公演で大規模なフォトスポット施策があったのが印象的です。

 

リピートしてもらおう

1回参加してくれた人へ、再度参加してもらうための施策です。この辺はやっぱりSCRAPが強い印象です。

公演後に配られるイベントラインナップ、全員に配ってるのもったいな!って思いますよね。僕も思います。でもこれだけマーケ施策を適切に打っているSCRAPがやめないということは、それなりの費用対効果があるってことなのかなと勝手に想像しています。

あとはSCRAPからはメルマガめっちゃ来ますよね。多分ですが、このメルマガで初めてイベントの情報を知る人って多いんじゃないかなって思っています。これ、自社チケットサイトなのでメールアドレスのデータを自社で持てているからこそやりやすい施策です。

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また、さらに優良顧客を囲い込むための施策としては、会員制度が考えられますね。SCRAPの「少年探偵SCRAP団」、Tumbleweedの「タンブルウィードナゾクラブ」などが挙げられます。

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あとちょっと話は逸れますが、すごく面白い事例が「Mystery for You」です。登録すると毎月持ち帰り謎が送られてくる仕組みです。「謎のサブスクリプション」と銘打たれていますが、実際はサブスクモデルじゃないですよね。サブスクって「サービスや商品を購入することなく、一定の期間、サービスや商品を利用できるビジネスモデル」のことなので。

これ実は、「定期購入モデル」です。一度購入したら、(停止しない限り)ずっと購入が発生するので、これもリピートを増やすための施策と考えられるでしょう。

 

まとめ

いろいろな事例を見てきましたが、これらは氷山の一角に過ぎません。自社SNS運用の話もしていませんし、ECサイトの話も、オフライン販売の話も、クリエイティブの話も、もっともっと語れることがあります。

それだけ、広報の仕事は、やらなければならないことがたくさんあるわけです。

謎解き界隈に限らず、日本では、まだまだ広報の地位が低いと言われています。海外では、経営層にCMO(Chief Marketing Officer)が含まれていることが多いそうです。

この記事が、謎解き界隈、そして日本のマーケットがより広がる一助となれば嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

最後に

僕が途中で言ったことを覚えていますでしょうか。

全てのwebサイトには「目的」があります。

 

……そう、当然、このブログ自身にも、目的があるわけです。本業めちゃ繁忙期ですし寝る間を惜しんで書いているんだからね。

 

ということで、お仕事募集しております!

現時点では副業として割ける工数の範囲内になりますが、僕にお力になれることがありましたら是非お声がけください。

まずは飲みに行くだけでも大歓迎です!🍺

Xで @yash_yash_ へDM、または以下の感想フォームからご連絡お待ちしてます!もちろん感想もお待ちしてます!

一緒に謎解き界隈を盛り上げていきましょう!